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仮面城(日文版)-第8部分
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言下にそれをうち消したのは香代子である。
「おとうさまが銀仮面の一味だなんて、そんな、そんな、そんなばかなことはありません」
香代子はくやしそうに、目に涙をうかべていた。等々力警部がそれをなだめて、
「お嬢さん、あなたはまだ子どもだから……」
「いいえ、いいえ、子どもでも、それくらいのことは知っていますわ。あの大宝冠は、もともと、あたしのうちからぬすまれたんです」
「な、な、なんですって!」
金田一耕助は顔色をかえて、
「そ、それじゃあれは、おとうさんのものだったの? おとうさんは、しかし、あんな貴重なものをどこから手にいれたの?」
「ちっとも貴重じゃありません。あんなもの、いくらでもありますわ」
「いくらでもあるって! あんな大きな、傷のない、りっぱなダイヤが!」
宝作老人もびっくりして、目を丸くしている。香代子は顔色もかえずに、
「ええ、ありますわ。おとうさんは、ここにいらっしゃる文彦さんにも、黄金の小箱をさしあげましたが、そのなかにも、大宝冠にちりばめてあったのと、おなじくらいの大きさのダイヤが、六つはいっていたはずなんです」
一同は思わずだまって顔を見合わせた。
ああ、この少女は気がくるったのではないだろうか。何十儯⒑伟賰|という値うちのある宝石をまるで石ころみたいに思っているのだ。それともそこに、なにか大きな秘密があって、この少女こそ、西洋のおとぎ話にでてくるような、ダイヤモンドにうずまっている、小さな女王さまなのだろうか。
吉本哕炇证⑷摔郡韦蓼欷啤|都劇場へかけつけてきたのはそのときだった。
吉本哕炇证稀ⅳ工挨摔猡袱悚猡袱泐^の金田一探偵を発見した。そして牛乳のあきびんと、血ぞめのハンカチをだしてわたすと、手短に、三太の冒険を報告した。
「な、な、なんだって! そ、それじゃ越中島の怪汽船のなかに大野老人や文彦くんのおかあさんが……よし、け、警部さん!」
いうにはおよばぬと等々力警部は、大急ぎで自動車のしたくをさせると、
「加藤さん、あなたはあとで、もう一度、警視庁のほうへきてください。いずれ、ゆっくりご相談しましょう」
と、いうことばもいそがしく、宝作老人をひとり残して、一同ははや出発していた。越中島めざして、まっしぐらに……。
無線通信
話かわって、こちらは怪汽船、宝石丸である。
この宝石丸は大きさこそ、それほどではないが、船のなかにはりっぱな無電室があって、いま無電技師が一心ふらんに、どこからか、かかってきた無電を受信していた。
やがて、受信がおわると、無電技師はさっそく、ほんやくにかかった。どうやら無電は、暗号でかかってきたらしいのだ。
ところが、そのほんやくがすすむにしたがって、技師の顔には、しだいにおどろきの色がふかくなっていった。やがてほんやくがおわると、技師はそれをわしづかみにして、無電室からとびだした。
無電技師がやってきたのは船長室である。ノックする間も待てぬとみえて、技師はいきなりドアをひらいたが、そのとたん、おもわずアッと、その場に立ちすくんでしまった。
それもそのはず、船長室には、大きなスト证盲皮ⅳ毪韦坤ⅳい蕖ⅳ饯违攻醛‘ブには、石炭の火がクワックワッと燃えている。そして、そのスト证握妞恕⒋笠袄先摔螭袱椁幛恕ⅳい工摔筏肖辘膜堡椁欷皮い毪韦坤ⅳ饯蝸I足は、くつもくつ下もぬがされ、ズボンもひざのところまでまくりあげられているのだ。
しかも、そのいすのうしろに立っているのが、あの気味の悪い老婆なのだった。老婆は鋭い声でなにかいいながら、じりじりと、いすをスト证韦郅Δ丐妊氦筏皮い盲俊¥饯韦郡婴恕⒋笠袄先摔稀⒖啶筏菠胜Δ幛颏ⅳ菠胜椤I足をバタバタさせるのだ。
わかった! わかった! この気味の悪い老婆は、こうして大野老人に、だいじな秘密を白状させようとしているのにちがいない。
ああ、なんという残酷さ。あと五十センチ、三十センチ、二十センチ……老婆がいすをまえに押せば、大野老人の両足は、いやでも、燃えさかるスト证位黏韦胜恕ⅳ悉い盲皮い韦扦ⅳ搿
無電技師がとびこんできたのは、ちょうどそのときだった。
「だれだ!」
老婆はびっくりして、いすのそばをはなれた。そのとたん、ガタンといすがうしろへずれて大野老人は、あの恐ろしい、火責めより助かった。
「なんだ、おまえか。なぜノックをしないのだ。むだんでとびこむやつがあるか!」
ああ、その声、それは老婆の声ではない。りっぱに男の声なのだ。それでは、この老婆というのは、男が変装していたのだろうか。
無電技師は、あまり恐ろしいその場のようすに、|肝《きも》をつぶして立ちすくんでしまった。
老婆は気味悪くせせら笑って、
「あっはっは、なにをそのように、みょうな顔をしているのだ。こいつあまりごうじょうだから、ちっとばかり熱いめをさせてやろうと思っていたところだ。よく見ておけ、これが裏切り者にたいする、銀仮面さまのおしおきだ。おまえも裏切ったりすると……」
「あっ、その銀仮面さまです!」
無電技師が思いだしたように叫んだ。
「その銀仮面さまから、いま無電がかかってきたのです」
「なに、銀仮面さまから……、それをなぜ早くいわんか!」
老婆に化けた男は、ひったくるように、無電技師の手から、紙切れをとりあげたが、一目それを読むと、
「ちくしょう!」
と、叫んで歯ぎしりした。
それはつぎのような電報だったのだ。
[#ここから1字下げ]
宝石丸発見サル。金田一耕助、等々力警部ラ急行中。岸ペキニ小僧ヒトリカクレテイルハズ。ソイツヲトラエテ、タダチニ出帆、イツモノトコロニテ、船体ヲヌリカエ、名マエヲ|銀《ギン》|星《セイ》|丸《マル》トアラタメヨ。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から2字上げ]銀 仮 面
[#ここから3字下げ]
宝石丸船長ドノ
[#ここで字下げ終わり]
ああ、それにしても銀仮面は、どうして金田一耕助や等々力警部が、越中島さして急いでいることや、また、岸ぺきに三太がかくれていることまで、知ることができたのだろうか。
牛丸青年
そんなこととは夢にも知らぬ、こちらは三太少年である。
金田一耕助がやってくるのを、いまかいまかと待ちながら、その目はゆだんなく、怪汽船宝石丸を見張っていた。
ところが、どうしたのか、だしぬけにえんとつから、煠猡Δ猡Δ取ⅳⅳ辘悉袱幛郡人激Δ取⒓装澶紊悉扦蟻組員たちが、いそがしそうに、右往左往しはじめた。
「アッ、いけない。あの船は出帆しようとしている!」
三太はあわててあたりを見まわしたが、そのとき、ふと目にうつったのは、どうもうなつらがまえをした、マドロスふうの男だった。
「やい、小僧、きさまはそんなところでなにをしているんだ!」
われがねのような声をかけられ、三太はしまったと、心のなかで叫んだ。
そこで無言のまま、身をひるがえして逃げだしたが、するとそのときむこうから、やってきたのが、これまたどうもうな顔をした船仱辘胜韦馈¥筏猡长い膜稀⒆螭文郡椁窑郡い丐堡啤⒖证恧筏ⅳ搿
「やい、小僧、どこへいく!」
傷の男は三太のまえに、大手をひろげて|仁《に》|王《おう》立ちになった。
ああ、もうだめだ。ひきかえそうにもうしろからは、マドロスふうの男が、にやりにやりと笑いながら、近づいてくる。そして、まえにはこの傷の男。進退きわまったというのはまったくこのことだろう。
それでも三太はひっしになって、
「おじさん、どいてよ。ぼく、散步してるんだ」
「なんだ、散步だと。なまいきなことをいいやがる。よしよし、散步をするならいいところへ連れてってやる。待ってろよ」
傷の男はポケットから平たい銀色のいれものをだした。そして、パチッとそれをひらくと、なかからとりだしたのは、グッショリぬれたハンカチだった。
三太はハッと危険を感じて、
「おじさん、かんにんして……!」
と、身をひるがえして逃げようとしたが、その首すじをむんずととらえて、ひきもどした傷の男は、やにわにぬれたハンカチを、三太の鼻にあてがった。
「あ、あ、あ……!」
三太はちょっと、手足をバタバタさせたが、すぐに、ぐったりと気を失ってしまった。
「どうした、あにき、うまくいったか」
「さいくはりゅうりゅうよ。クロロホルムのききめに、まちがいがあってたまるもんか」
「よし、それじゃおれがかついでいこう。しかし、だれも見てやしなかったろうな」
「だれが見てるもんか。出帆だ。急ごうぜ」
三太をかついだふたりの男は、そのまま船のなかに、すがたを消して、やがて、あのいまわしい怪汽船、宝石丸は岸ぺきをはなれた。
だが、これらのようすを、だれ知る者もあるまいと思いのほか、さっきからできごとを、残らず見ていた者があった。
しかも、そのひとというのが、大野老人の助手、あの口のきけない牛丸青年なのだ。
牛丸青年も劇場から、大野老人のあとをつけ、さっきからものかげにかくれて、ようすをうかがっていたのだが、いままさに、船が岸ぺきをはなれようとするせつな、ものかげからとびだすと、パッといかりにとびついた。
いかりは水面をはなれると、ガラガラと、しだいに高くまきあげられていく。そのいかりに両足をかけ、ふとい鉄のくさりにすがりついた牛丸青年のすがたは、まるで船についたかざりかなにかのように見えた。
そんなこととは夢にも知らない、宝石丸の伣M員は、船をあやつりそのまま遠く、枺┩澶韦胜郡摔工郡蛳筏皮い盲俊
金田一耕助の一行が、かけつけてきたのは、それから間もなくのことだったが、そのじぶんには船体はおろか、船のはきだす煙さえも、もうそのへんには残っていなかったのだった。
文彦の秘密
金田一耕助や等々力警部が、じだんだふんでくやしがったことはいうまでもないが、それにもまして力をおとしたのは、文彦と香代子である。
ああ、その船には文彦のおかあさんと、香代子のおとうさんが、とらわれびととなってのっているのだ。そのいどころがやっとわかって、やれうれしやと思う間もなく、船はまた、ゆくえ知れずになったのだった。
「なあに、心配することはないさ。船の名もわかっているんだから、すぐ手配をしてつかまえてしまう。まあ、安心していなさい」
等々力警部は、文彦と香代子の肩をたたいて元気づけた。
「それにしても三太はどうしたろう。あいつもひょっとしたら悪者につかまえられたのじゃないでしょうか」
金田一耕助は心配そうな顔色だった。
一同は、それからすぐに、海上保安庁へかけつけて、怪汽船、宝石丸のゆくえをさがしてもらうようにたのみこんだ。
「さあ、こうしておけばだいじょうぶだ。あしたまでには船のゆくえもわかるよ。ああ、もうすっかり日が暮れたな。とにかくいちおう、警視庁へ帰ろうじゃありませんか」
そこで、一同が警視庁へひきあげてくると、そこには意外なひとが待っていた。それは文彦のおとうさんだった。
金田一耕助は、ゆうべ文彦のおかあさんがさらわれると、すぐに大阪の出張先へ電報をうっておいたのだが、おとうさんはそれを見て、大阪からひきあげてきたというわけなのである。
「ああ、おとうさん!」
「おお、文彦か。くわしいことは刑事さんたちから話をきいたが、おまえもさぞ心配したろう。ところで、金田一さん、等々力警部さん」
「はあ」
「いろいろお世話になりましたが、実はこんどのことについて、あなたがたにきいていただきたいことがあるのですが……」
なんとなく、文彦にえんりょがあるらしいおとうさんの顔色に、
「ああ、そう、それじゃどうぞこちらへ」
と、警部が案内したのは隣のへやだった。おとうさんは、金田一耕助と等々力警部の三人きりになると、やっと安心したように、
「お話というのはほかでもありません。実はあの文彦のことですが……」
「文彦くんのこと……?」
「そうです。こんなことはあの子に知らせたくないのですが、実は、あれはわたしどものほんとの子ではないのです」
「な、な、なんですって!」
金田一耕助も等々力警部も、思わず大きく目を見張った。
「そうです。あれは捨て子でした。香港のある公園でひろったのです。ちょうどそのころ、わたしたち夫婦は、子どもがなくて、さびしくてたまらなかったところですから、これこそ神さまからのさずかりものと、大喜びで、ひろって育ててきたのです。それがあの文彦です」
金田一耕助は等々力警部と顔を見合わせながら、
「それで、文彦くんのほんとうのおとうさんや、おかあさんは、ぜんぜんわからないのですか?」
「わかりません。ただ、赤ん坊をくるんであったマントの裏にロ拮证恰ⅴ‘ノという名まえがぬいとってありました」
「オ韦扦工盲疲俊
金田一耕助はからだをのりだして、
「それじゃ、文彦くんにダイヤをくれた大野健蔵という老人が、ひょっとすると、文彦くんのおとうさんかも知れない……と、いうことになるんですか?」
「そうかも知れません。しかし、わたしにはただ一つ、気になることがあるんです」
「気になることというのは……?」
「ちょうど、文彦をひろったじぶんのことです。新聞に、香港を旅行中の、有名な日本の科学者がゆくえ不明になったという記事がでていたことがあるんです。ひょっとすると、当時香港をあらしていた、銀仮面という盗伽韦筏铯钉扦悉胜い趣いΔ长趣扦筏郡ⅳ郡筏胜长趣悉铯辘蓼护蟆
ところで、その科学者の名まえですが、それが大野|秀《ひで》|蔵《ぞう》博士というのです。しかもそのとき、博士のおくさんも、生まれたばかりの、まだ名もついていなかった赤ん坊も、いっしょに、ゆくえ不明になっているのです」
ああ、こうして、文彦にまつわる秘密のベ毪稀ⅳ筏坤い摔悉欷皮い韦坤盲俊
【 日本大观园 。jp118。 】友情整理
文彦の父
文彦はほんとうは、竹田家の子どもではなかったのだ。赤ん坊のころ、香港の公園でひろわれた捨て子だったのだ。そして前後の事情から考えると、文彦はそのじぶん、香港でゆくえ不明になった有名な科学者、大野秀蔵博士の子どもではないかと思われるのだ。
それでは、文彦のほんとうのおとうさん、大野秀蔵博士はどうしたのだろう。そのころのうわさによると、大野秀蔵博士は、怪盗銀仮面にゆうかいされたのだということだが、はたしていまでも生きているのだろうか。
それにしても恐ろしいやつは銀仮面だった。そのむかし、秀蔵博士をゆうかいしたばかりか、いままた、文彦の義理のおかあさんや、文彦にダイヤをくれた大野健蔵老人をゆうかいして、怪船『宝石丸』にのって、いずこともなく連れ去ってしまったのだ。ああ、ひょっとすると、その大野健蔵老人と、大野秀蔵博士とのあいだには、なにか関係があるのではないだろうか。
それはさておき、文彦のおとうさんから、文彦の秘密を聞いた金田一耕助と
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