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好き≠恋(日文版)-第18部分

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「なんか、話してたの?」
「……え?」
 いきなりそんなことを聞かれて、健人は何を尋ねられているのか分からなかった。分からないと言った顔をしている健人に、歩は「だから、林と何か話してたの?って」と今度は詳細な話をした。
「いや、特には……」
 内容のある話をしていたわけではない。铡Щ工瑜Δ搜预Δ取iは「……俺には言えない話?」と皮肉げに言い、健人を戸惑わせた。どうしていいのか分からず、健人は歩を見上げたまま、何も言わなかった。
「……ごめん。ちょっと、俺、ムキになってたかも」
 不安げな健人の顔を見て、歩は困ったように笑った。そんな表情をさせたいわけではないのに、最終的に歩は困ったように笑う。それは自分を責めているからなんだろう。笑うことしかできず、不恰好な笑みになっている。健人はこれ以上、口を開くことはできなかった。
 健人が分からないと不安がっているのと同じように、歩も困っていた。追求するつもりは無かったのに、話してくれない健人にもどかしさを覚えた。それから何も考えずにあんなことを言ってしまい、健人を黙らせてしまった。目下に見える表情は、怒っているのか、それとも悲しんでいるのか、考えていることが分からなかった。
 しばしの間、沈黙が続く。
「ねぇ、健人」
 歩は困った表情のまま、健人を見つめている。その目は、どこか悲しんでいるようにも見えて、健人の胸が苦しくなる。
「一回、話し合ったほうがいいかもね。俺達」
 そう言った歩に、健人は頷いて立ち上がった。うだうだ考えていても仕方ないことは、互いに分かっていて、話し合わなければ解決しないのも分かっていた。それでも、互いの気持ちを知ってしまえば、ショックを受けるのは自分だと思って話し合うことを避けていたのだ。それから始まるすれ摺い稀ⅳ瑜辍⒍摔蜻hざけていく。
 話し合いで、二人の距離が縮むのかどうか、それはまだ分からない。
日差しは強い。ジリジリとあぶられているような錯覚に陥りながらも、健人は懸命に前へと進んだ。考えているだけで、眩暈がしそうだった。これから、話し合うと決めた。それに返事をしたまでは良いが、本当のことを言われるのが怖くて仕方なかった。
 歩に嫌われるのが怖い。
 そう思っていたけれど、これ以上、こんな曖昧な関係を続けて行く方が恐怖を感じる。一度、嫌いと言われたのだから、今回だって大丈夫だと服を握りしめた。こんな覚悟をしなければいけないほど、追い詰められているのが現状だった。
 会話も無く、二人はただ、家へと向かって歩いている。気温は日中の最高まで達しているせいか、歩いているだけで汗が流れてくる。まだ、公園の日陰に居た方が気持ち良かった。影も短く、照りつけている太陽は弱まることを知らない。ジ俯‘と蝉の鳴き声が、やたらと耳についた。
 あっという間に家に到着してしまい、健人は息を吐きだした。流れてくる汗を腕で拭って、靴を脱ぐ。歩は先にリビングへ行ってしまって、玄関には健人がいるだけだった。このまま、逃げてしまいたい。それでも、逃げ出す勇気すら暑さに奪われてしまった。
 玄関で靴を脱いで、家の中に入る。リビングに繋がるドアが、とても分厚く感じる。家と言うものは、家庭を守るシェルタ扦ⅳ辍⒓易澶违匹辚去戛‘だ。その中に足を踏み入れて良いのは、家族だけだ。入りづらさを感じると言うことは、その家族の一員で無いことを意味するのだろう。以前から感じていた、家の中の居づらさ。健人は家族から認められていないと思っていた。本当の家族は、母と義父と歩だけなのではと、勝手に決めつけていた。けれども、一人、居づらさを感じていただけで、本当に拒絶していたのは健人だったのではないだろうか。半端ものだと言われているように思いこんでしまい、健人自身が家族を受け入れていなかった。勝手に作られた新しい家族を、健人は拒んでいたのだ。
 その結果として、最初に、歩を嫌った。同い年だから、言いたいことを言える相手だった。義父も、健人に内緒で再婚した母にも、裏切りを感じていたけれど、育ててくれている恩があるから文句など言えなかった。態度にも出すことが出来なかった。けれど、歩は摺ΑQ饪帳盲皮い胜堡欷小⒂皮皮猡椁盲皮い毪铯堡扦猡胜ぁ¥郡坤瓮尤摔取⒁痪wだった。だから、感情を素直に出すことが出来たし、嫌うことだって簡単だった。歩がどう思うかなんて、健人の頭の中には一切無かった。歩を嫌っていると言うことは、家族を拒否しているのと同等で、健人は無意識のうちに歩を嫌うことで家族を認めていないと言い張っていたのだ。
 近寄ってほしくない。構ってほしくない。そう思うことで、自分のアイデンティティを確立していたのだ。所詮、嫌っていること自体が、自己満足と言うわけだったのだ。
 それなら、歩に嫌われても仕方ない。傲慢だと言われ、大嫌いと言われるのは当たり前だ。歩からしたら、そんな健人の考えは知ったことではないからだ。新しくできた兄弟に、歩は仲良くなろうと近づいてきてくれたのに、健人がそれを最初から拒否した。そんなことをしてしまえば、歩が良いように思わないのは分かりきっていることだ。それでも、歩は健人に優しくしてくれた。同情からかもしれないが、あの雨の日から、歩は変わってくれたのだ。
 それがどう言うことなのか、健人には分からない。分からないから、こうして悩んでいるのだった。
「……健人?」
 ドアノブを握ったまま、入ってこない健人に不安を覚えて歩はリビングの扉を開けた。不安げに見上げる健人を見つめて、歩は「どうしたの?」と尋ねる。今にも泣きそうな顔は、あの雷の日とダブり、胸が苦しくなった。
「……俺と、話し合うなんてイヤだった? 健人がイヤなら……」
「イヤなんかじゃない」
 心配そうな顔をして、健人のことばかり気にする歩に、健人はヒステリックに否定してしまった。健人は頭を振ってから、もう一度、歩を見上げる。歩の表情は変わらず、心配しているような悲しい目をしていた。
「俺は……、酷い奴なんだ」
 漏れるような声に、歩の眉間に皺が寄る。それを見た健人は、目を逸らしたくなったが逸らさずに歩を見上げ続ける。
「お前が前に言った通り、俺は自分が被害者だと思って、勝手に決めつけてた。母さんが再婚したこと、どうしても認めらんなくて、でも認めなきゃいけないから無理してそれを受け入れた。受け入れたと思ってたけど、俺は全然、受け入れてなんかいなかったんだ。一昨年まで二人で頑張ってきたのに、再婚したって聞いたとき、俺だけじゃダメなんだって思った。母さんは俺だけじゃ支えきれないって決めつけられたようで、凄くショックだった。家事だって、学校だって、全部母さんのために頑張ってきたのに、それを否定されたと思った。母さんのためだって、俺が勝手に決めつけたことがいけなかったのかもしれない。本当は母さんだって、俺一人じゃ寂しかったのかもしれない。そう思ったら、凄く自分が情けなくなって、そんな風に思いこんでる俺がバカみたいで……、家族には入れないと思ってた。俺だけ、家族にはなれないって思ってたんだ。だったら、裏切られる前に嫌おうと思った。みんな、嫌ってしまえば、後で嫌いって言われても俺は傷つかないから……」
 泣きそうになる健人の腕を掴んで、歩は黙って聞いていた。黙って聞いてくれていることが健人にとって、今、一番嬉しいことだった。否定も肯定もしないが、歩がちゃんと聞いてくれていることは見ているだけで分かる。
「でも、母さんとか、義父さんには……、冷たく出来なかった。育ててもらってるからとか、家に住まわせてもらってるから、冷たい態度を取っちゃいけないと思って、出来るだけ普通に振る舞ってた。だけど、お前は……、歩なら嫌っても良いんじゃないかって、歩を嫌ってることで俺は自分を保ってただけなんだ……。謝って済まされる事じゃないって言うのは分かってる。勝手に嫌いって決めつけて、突っぱねて、優しくしようとしてくれてたのを最初から拒んで……。だから、俺はお前に嫌われても仕方ないんだ。嫌われるようなことを、ずっとしてきたんだから」
 健人の表情が苦渋に滲んで、目を瞑る。今まで泣いてこなかったせいか、泣こうと思っても涙なんて出てこなかった。泣いて、許される事ではない。泣いても、同情を引くだけだと分かっていても、今は泣きたいと思った。
「謝っても許されないことぐらい分かってる。優しくしてくれたことだって、今になってようやくありがたいと思った。でも、今頃気付くなんて、俺は本当に最低で、どうしようもない奴で……。自分のことしか考えてない、凄く弱い奴なんだ。だから……、嫌いなら嫌いではっきり言ってくれ。じゃないと、俺、分からないから。言ってくれないと、深読みなんか出来ないから、分からない……」
 崩れるように蹲った健人に釣られて、歩も一緒にしゃがんでしまう。掴まれている手がとても温かいのに、ク椹‘が効いているせいか、とても寒く感じた。何も言ってこない歩に、健人は少しだけ悲しさを覚えた。
 数秒間、沈黙する。啜り泣く様な息遣いが聞こえて、歩は健人を見つめた。
「……健人」
 名前を呼ぶと、ハッとしたように顔を上げて、健人は歩を見つめる。まっすぐ歩の目を見つめる健人は、不安げで苦しそうだ。こんな時こそ、泣いてしまえば良いのに、健人は泣けずに苦しんでいるようだった。
「健人は俺のこと、どう思ってるの? 嫌い? 好き?」
 優しく尋ねられて、健人は唇をかみしめた。好きか、嫌いか、その二択なら健人はすぐに選ぶことが出来る。出来るはずなのに、言葉が出てこなかった。好きと言って、歩に拒否されたらどうしよう。そんな考えが過ぎって、答えることが出来ない。
「……俺は」
 一言、だ。たったの2文字を言うだけなのに、こんなにも出ないとは思わなかった。口が渇いて、喉が痛い。フロ辚螗挨尉@ぎ目を見つめて、健人は息を吸った。
「健人のこと、好きだよ。俺は」
 まず、頭に浮かんだのは、空耳かどうか、だった。言葉が頭の中に流れてきたとき、それを情報として捉えることが出来なかった。顔を上げて、先ほど吸った息を吐きだした。言葉と一緒に吐き出す予定だったのに、予定とは全然摺ρ匀~が声として出てきた。
「……え」
 吐き出した息を共に出てきた戸惑いの声に、歩は困ったように笑った。
「だから、健人が俺のこと、どう思ってるか気になる。今は、嫌われて無いってことで、良いんだよね」
 何でも許してくれるような笑顔を向けられて、健人は何も答えることが出来なかった。ひたすら、何度も頷いているうちに、目から何かが零れてくるのが分かった。パタパタとフロ辚螗挨怂韦浃沥郡长趣恰⑵い皮い毪韦坤葰莞钉い俊
「健人は最低な奴じゃない」
 そこだけはどうしても否定したくて、少し強い口眨菤iは言う。
「でも、俺はっ……」
「最低な奴じゃない」
 もう一度、今度は強い口眨茄预铯欷啤⒔∪摔峡冥颏膜挨螭馈W畹亭坤人激盲皮い毪韦恕iがそれを認めさせないと何度も言い返される気がした。こんなにも良い奴だと言うのに、どうして嫌ったんだろうかと、昔の自分が憎くなった。健人は優しく髪の毛を撫でる歩を見つめた。
「無理してる、わけじゃないんだな」
「無理なんかしてないよ。健人が思ってるほど、俺は器用な奴じゃないし、嫌いな奴と話しあったりしようとも思わない。…………それに、健人が思ってるより、俺は優しい奴なんかじゃないよ」
 歩は健人の腕を取って、立ちあがらせた。目を逸らさず、見つめている健人を見下ろして、少しだけ微笑む。健人の想いを聞けて、すっとした。今まで嫌われていた理由も分かって、肩の荷が降りた。何が原因で二人の関係をこじらせていたのか分かって、すっきりとする。
「俺が可哀想だからじゃ……」
「そんなんで優しくしてると思ったの? 確かに、可哀想だと思ったことはあるよ。雷に怯えてる時とか、ちょっと思ったかも。でも、それだけで優しくしてやれるほど、俺は出来た人間じゃないし。本気で健人のこと嫌いだったら、雷鳴ってて怯えてるのを見ても、絶対に無視してた。一人で怯えてれば良いと思ってる。でも、俺は放っておけなかったんだ。健人が一人でガタガタ震えてるの見たら、抱き締めずには居られなかった。一人じゃないって、健人に教えてあげたかった」
 健人の腕を取っている歩の手が、少し震えているように感じた。健人は手に目を移して震えているのを見て、歩に目を移す。寒いわけでもないのに、どうして手が震えているのか、分からなかった。
「ジンは、健人のことを可哀想だって言ってた。俺だって可哀想だと思ったのに、可哀想なんて同情するなって思ったんだ。すげⅴ啷膜い俊=∪摔戎倭激─盲皮毳弗笠姢皮郡椤ⅴ弗螭啶啷膜い啤⒃绀∪摔橐悉丹胜悚盲扑激盲俊A证仍挙筏皮霑rもそうかな。健人が誰かと楽しそうに喋ってるとさ、イライラしてる自分がいるの。俺さ、すげ黄饔盲坤椤ⅳ饯ρ预Δ坞Lせなくて……。でも、健人にこんなこと言えないし、一人で空回ってた。だから、凄く健人には迷惑かけたよね。ごめんね……」
 掴んでいる手が離れそうになり、健人はその手を掴み返した。その手が離れて行くことが、何よりも辛い。歩の手を握って、健人は顔上げる。
「同情されるのは、好きじゃない。むしろ、嫌いだ。可哀想だなんて思われたくない。歩にも……、同情されたくないと思った。でも、優しくしてくれるなら同情でも良いと思ったんだ。俺のことを考えてくれるなら、同情でも何でもよかった……」
「……同情なんか、してないよ。可哀想って思ったら、同情なんか通り越しちゃったんだよ」
 呆れたように笑っている歩を見て、健人は首を傾げた。言っていることの意味が、よく分からなかった。
「……どう、いう……」
 尋ねる前に健人は手を引っ張り上げられ、つま先立ちになる。いきなり、引きあげられたことに驚いて歩を見ると、歩の顔が目前にまで近づいていた。唇に何か暖かいものが触れて、すぐに離れた。
 引きあげられた手がそっと離れて、足に地面が付いた。
 健人は顔を見上げたまま、固まっていた。
「同情通り越して、好きになった。さっきも言ったと思うけど、健人のこと好きだよ。俺は」
 もう一度はっきりと言われ、健人は唖然としたまま、歩を見上げていた。
 この好きの意味が、普通の好きとは摺Δ取o理やり思い知らされた。それもまた、脳が情報を拒絶し、理解しようとする前に思考回路が停止してしまった。
「健人のこと、好きだよ」
 この言葉を聞いたのは、二度目だった。一度目のときは、冗談を言っているような、からかわれている気がして間に受けていなかった。けど、今は摺Αiの目は真剣で、挙句の果てには唇まで合わせてきた。それが何を意味しているのか、言われなくても分かっていた。ただ、信じられない。それだけだった。
「……ごめん」
 歩の指が、健人の唇に触れる。そこでようやく思考が現実に戻っ
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